科学的アプローチ

「頭の臭い」に関しては、「臭い頭皮症候群(Smelly Scalp Syndrome: SSS)」と「臭い頭髪症候群(Smelly Hair Syndrome: SHS)」という表現が良く使われています。 双方とも頭から発生する持続的で不快な臭いを指すため、しばしば同義語で使われ、主に細菌や真菌の蓄積、過剰な皮脂(油脂)、汗、などにより引き起こされます。同じものと考えられることが多い一方で、起源が異なることがあります。頭皮症候群は皮膚レベルの問題(皮脂腺の活動)に関連すると考えられ、頭髪症候群は臭いが毛幹それ自体に吸収されることに起因します。
1.「臭い頭(頭皮・頭髪)」の主な原因
(1) 過剰な皮脂生産 頭皮の皮脂腺は皮脂を生成し、髪を潤す天然の油分です。しかし、これらの分泌物が過剰に分泌されると、汗や細菌、古い角質細胞と混ざることがあります。これにより細菌や真菌が繁殖しやすい環境が生まれ、強い酸っぱい臭いや脂っこい臭いだけでなく、脂性の頭皮や頭皮のニキビなどの問題も引き起こします。特に自然な脂性の髪質を持つ人はこれらの問題に悩まされることが多く認められます。
(2) 汗と細菌
頭皮には主に2種類の汗腺があります。
- エクリン汗腺: 全身、頭皮にも分布し、主に体温調節のために水性の汗を分泌します。エクリン汗はほとんど無臭ですが、頭皮の細菌と混ざると不快な臭いを生じることがあります。
- アポクリン汗腺: 毛包の周りに集中し、タンパク質と脂質を豊富に含む濃厚で乳白色の汗を分泌します。細菌がこの汗を分解すると、より強く特徴的な体臭が生まれ、臭い頭皮の原因となります。
どちらのタイプの汗も細菌を潜蔵しますが、エクリン汗は通常軽い臭いを引き起こし、アポクリン汗はタンパク質と脂肪が豊富なため強い臭いを生み出します。

(3) 頭皮乾癬

乾癬(かんせん)は自己免疫疾患で、家族内で発症することが多い疾患です。体に赤く鱗状の乾燥した皮の部分が現れます。これらの斑点は特に死んだ角質がたまると臭いを帯びることがあります。乾癬の患者の約半数は頭皮に発疹を経験し、悪臭の原因となることがあります。
(4) 脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、頭皮や体の他の場所に現れる慢性的な皮膚発疹です。乳児ではこの発疹は「ゆりかごキャップ」と呼ばれます。高齢者では、発疹が乾癬に似た剥がれた脂性の鱗片を引き起こし、臭いの原因になることがあります。
(5) フケ

脂漏性皮膚炎と同様に、フケはかゆみや剥けを引き起こす皮膚疾患です。頭皮乾癬や脂漏性皮膚炎と比べて、フケは軽度で一般的で、成人の約半数に影響を及ぼします。一部の人ではフケに臭いが伴うこともあります。
(6) 多汗症 多汗症とは、運動していない時でも過剰に汗をかく状態です。頭皮に汗がかかると、汗が頭皮の細菌と混ざり合い、臭いの原因になります。
注釈:
- 2020年に日本皮膚科学会が60,969人を対象としたweb上でのアンケート調査を実施した結果によると、原発性局所多汗症の有病率は10.0%(腋窩 5.9%,頭部・顔面 3.6%,手掌 2.9%,足底 2.3%)であり、決して小さくない実態が明らかになっている。「出典:原発性局所多汗症診断ガイドライン2023年改訂版、日本皮膚科学会ガイドライン」
- 2026年2月28日放送の「TBS報道特集」の調査報道でも、この10%に関する言及がありました。
(7) マイクロバイオームの不均衡 頭皮には他の皮膚部と同様に、マイクロバイオーム(Microbiome)と呼ばれる細菌や真菌があります。これらの微生物はバランスが取れている場合には頭皮を助ける役割をします。しかし、ある種類が過剰になると感染や臭いを引き起こすことがあります。マラセジアは自然の頭皮酵母で、成長しすぎるとフケや臭いを引き起こすことがあります。
(8) ティネア・カピティス(頭部白癬)

頭部白癬は頭皮に影響を与える真菌感染症です。一般的な症状には、乾燥や鱗状の皮膚、かゆみ、赤み、脱毛などがあります。場合によっては、不快な臭いを生じることもあります。
(9) 頭皮の不衛生 定期的に髪を洗わなかったり、洗髪後に頭皮をきちんとすすがなかったりすると、皮脂や汗、ヘアケア製品の残留物が溜まる原因になります。この蓄積物は頭皮の臭いの大きな原因となっています。
(10) 日常摂取する食物と食事の選択

辛い料理や、玉ねぎ・ニンニクなど、特定の食べ物は頭皮の臭いを含め、体の臭いをより強くすることがあります。体が食べ物や汗を処理する仕組みが頭皮の臭いの原因になることがあります。
(11) ホルモンの変化
思春期、妊娠、更年期などのホルモン変動は頭皮の皮脂分泌を増加させ、それが臭い頭皮につながることがあります。ホルモンは頭皮の健康に重要な役割を果たし、ホルモンバランスの乱れは臭いを強める要因となります。
(12) 頭皮の脱水
頭皮が脱水すると、しばしば過剰に補うためにより多くの皮脂を生成します。この過剰な油分が汗や細菌と混ざると、頭皮の臭いを引き起こすことがあります。
(13) タイトなヘアスタイル 三つ編みやお団子、ポニーテールなどのタイトなヘアスタイルは、汗や油分を頭皮に閉じ込めます。この空気の流れの欠如は細菌の蓄積を引き起こし、頭皮の不快な臭いをもたらします。
2.「臭い頭皮」と「臭い頭髪」で異なる原因
(1) 臭い頭皮症候群(SSS)
通常は皮脂分泌の増加、汗の蓄積、感染症(真菌感染症や脂漏性皮膚炎など)、または基礎的なホルモン異常により頭皮の皮膚から臭いを発生します。「カビ臭い」または「汚れた」臭いが特徴で、油っぽいと感じることがあります。
(2) 臭い頭髪症候群(SHS)
髪の毛自体に臭いが付着することがよくあります。頭皮と同じ要因によって臭いが引き起こされることがありますが、洗髪後でも頭髪に悪臭が残る場合があり、多くの場合、頭皮のマイクロバイオーム(Microbiome)のバランスが崩れていることが原因とされています。
3. 対策・解決方法
上記のように頭皮・頭髪の臭いには、様々でかつ複合的な原因が存在するため、その固有の症状に対して最も有効だと思われる対策・解決方法を見つけて適切に適用する必要があります。
